公開日:2026/05/13

退去時の清掃・原状回復はどこまで必要? 負担の範囲とトラブルを防ぐポイントを解説

退去時の清掃・原状回復はどこまで必要? 負担の範囲とトラブルを防ぐポイントを解説

賃貸物件を退去するとき、「どこまで掃除すればいいの?」「想像より高額な原状回復費用を請求されたらどうしよう」と感じる方が多いのではないでしょうか。実は、原状回復とは部屋を入居前の状態に完全に戻すことではありません。明確なルールがあり、正しい知識を持っていれば不要な費用を払わずに済む可能性があります。

本記事は、原状回復の基本的な考え方や、入居者が負担するもの・しないものの具体例、退去前にやっておくべき清掃・確認のポイントを徹底解説します。初めて家を退去する方、原状回復で何をすべきか疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。

退去時の原状回復とは?

原状回復という言葉自体は知っていても、その意味を正しく理解している人は意外に少ないもの。しかし、退去時にトラブルになりやすいのもまた、原状回復です。まずは原状回復の基本的な考え方と、費用負担に直結する「経年劣化」との関係を解説しましょう。

原状回復とは「元通りにする」のではない

原状回復と聞くと「入居前の状態に完全に戻すこと」とイメージしがちです。しかし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「借主の故意・過失や通常の使用を超える使い方によって生じた傷や汚れを復旧すること」と定義しています。また、2020年の民法改正により、経年劣化や通常の使用による傷み・汚れについては借主に原状回復義務がないと定められています。つまり、暮らしの中で自然に生じた傷や汚れまで直す必要はなく、その分の費用は貸主側の負担とされているのです。

原状回復と経年劣化の線引き

原状回復の費用負担を考えるうえで重要なのが「経年劣化」の考え方です。経年劣化とは、畳の自然な色あせや、日焼けによる壁紙の変色など、時間の経過や通常の使用によって自然に生じる劣化を指します。

前述の国土交通省が策定したガイドラインでは、経年劣化をふまえた減価償却の考え方が取り入れられています。例えば、壁紙の耐用年数は6年とされ、6年以上住んだ場合の残存価値は1円です。つまり、入居期間が長いほど借主の負担割合は小さくなる仕組みになっているのです。仮に退去時に壁紙の汚れを指摘されたとしても、長く住んでいれば全額を負担する必要はありません。退去費用の見積もりを確認する際には、この経年劣化による減額が反映されているかをチェックすることが肝心です。

退去時に費用を負担するもの・しなくていいもの

原状回復では、「どこまでが自分の負担か」が最も気になる方も多いでしょう。以下では、具体的にどんな汚れや傷が自己負担になるか否かを表にまとめています。

貸主負担(入居者が払わなくていいもの)の具体例

以下は、一般的に貸主負担になる一例です。

場所

具体例

理由

壁・天井

日焼けによる壁紙の変色

経年劣化

壁

画びょうやピンの小さな穴

通常の使用範囲

床

家具の設置による、へこみや傷

通常の生活で避けられない範囲

床

フローリングや畳の色あせ

経年劣化

壁

冷蔵庫裏の黒ずみ(電機焼け)

通常の使用範囲

設備

給湯器やエアコンなど設備の経年による不具合

経年劣化

入居者負担になる汚れや傷の具体例

入居者負担になるポイントは、「通常の使い方の範囲を超えている」「不注意によるもの」が挙げられます。

場所

具体例

理由

壁・天井

たばこのヤニによる変色や臭い

通常の使い方とはいえない

壁

下地ボードまで達した釘やネジの穴

通常の使い方の範囲を超えている

床

引越し作業でつけた傷

借主の不注意による傷

床・壁

ペットによる傷や臭い

普通の使い方とはいえない

水回り

掃除を怠ったことで発生したカビや水あか

適切な手入れをしなかった

壁・床

落書きや故意につけた傷

経年劣化ではなく故意

判断に迷いやすいグレーゾーンの考え方

実際の退去時には、上の表のようにはっきり分けられないケースも生じます。よくあるケースが、結露を放置して広がった浴室や押し入れのカビです。結露そのものは建物の構造上発生するもので、本来は経年劣化に近い性質を持ちます。しかし、発生した結露を拭き取らずに放置し、その結果カビが拡大した場合は「借主の管理不足」とみなされ、入居者負担になる可能性があるのです。

また、契約書に「クリーニング費用は借主負担」「畳の表替えは借主負担」といった特約が記載されている場合は、国土交通省のガイドラインの原則とは異なる負担を求められることも。退去する前は契約書を見返し、特約の有無を確認しましょう。

退去前にやるべき、清掃・確認・費用トラブルを防ぐポイント

退去時のトラブルは事前準備で防げます。掃除、書類の確認、立会い時の対応など順を追って解説しましょう。

最低限に掃除するべき場所と優先順位を知る

退去時にプロ並みに掃除する必要はありません。ただし、汚れがひどいまま退去すると追加のクリーニング費を請求される可能性があるため、最低限の清掃が基本です。

特に水回り(キッチン・浴室・トイレ)は汚れが残りやすく、放置すると入居者負担と判断されるケースがあります。また、床のホコリやゴミ、コンロ周りの油汚れや換気扇も簡単に落とせる範囲で掃除すれば、立会い時の印象が変わります。普通に暮らしていた状態に整え、すぐ落ちる汚れを放置しないことがトラブルを回避できるポイントです。

ゴミ処分は退去日から逆算してスケジュールを立てる

意外に見落としがちなのがゴミの処分です。物件によっては、残されたゴミの処分費を別途請求されるケースも少なくありません。退去日が決まったら地域のゴミ収集カレンダーを必ず確認し、粗大ゴミがある場合は早めに回収を申し込みましょう。退去日から逆算して計画的に処分を進めれば余計な費用や手間を防げます。

契約書の「クリーニング特約」を確認しておく

退去前には、契約書に記載されている「クリーニング特約」を必ず確認しましょう。これは、退去時にハウスクリーニング費用を入居者が負担することを定めた条項です。この特約がある場合、丁寧に掃除しても別途クリーニング費が発生します。「きれいに掃除したのに請求された」というトラブルの多くは、クリーニング特約の存在を知らなかったことが原因の場合もあります。まずは契約書を手元に用意して、退去費用に関する記載を確認しましょう。

入居時の記録と見積もり明細で、立会い時に自分を守る

退去の立会いでは、管理会社の担当者と一緒に部屋の状態を確認して傷や汚れをチェックします。この場面で重要なのは、入居時の写真やチェックシートです。従来あった傷や汚れを証明できれば、不当な請求を避けられます。また、提示された見積もりはその場で即決せず、内容を確認してから判断する姿勢も大切。冷静に対応するための準備をしておきましょう。

マンスリーマンションなら退去時の清掃・原状回復はどうなる?

原状回復の費用や手続きに不安がある方は、契約形態を見直すのも一手です。マンスリーマンションなら、退去時に負担をかけず退去できるケースがあります。以下で違いを解説しましょう。

「クリーニング費込み」「敷金なし」で追加請求が起きにくい仕組み

マンスリーマンションでは、退去時のクリーニング費用が初期費用や賃料にあらかじめ含まれているのが一般的です。そのため、日常生活を普通に送っていれば退去時に追加で費用を請求されることはほとんどありません。また、一般的な賃貸のように敷金(家賃数カ月分)の支払いも不要。ただし、部屋を著しく汚した場合や、備品を破損・紛失した場合には別途費用が発生するため、最低限のマナーを守って使うことが大切です。

ライフラインの手続きが不要で、簡単に退去できる

一般的な賃貸物件では、退去時に電気・ガス・水道の解約手続きを自分でしなければいけません。しかし、マンスリーマンションではこれらの契約を運営会社が管理しているため、入居者が個別に手続きをする必要はありません。もちろん、退去時の立会いも不要です。転勤や出張、リフォーム中の仮住まいなど、退去の手間をできるだけ減らしたいシーンでは、マンスリーマンションは有力な選択肢といえます。

参考記事:マンスリーマンションとは?選ばれる理由や借りる際の注意点を解説!

参考記事:マンスリーマンションのデメリット・メリットとは?注意点や借りる際のポイントも解説!

退去時の清掃・原状回復は事前に理解しておけば無駄な出費を防げる

退去時の清掃や原状回復は、負担範囲の基本ルールや契約書で確認するポイントをおさえておけば本来支払う必要のない請求を避けられます。経年劣化や通常の使用による傷み・汚れは貸主側の負担であるという原則は必ずおさえておきたいこと。そのうえで、退去前に契約書の特約を確認し、水回りを中心に掃除して、立会い時には見積もり明細をしっかり確認しましょう。

また、退去時の手間や費用の不安をできるだけ減らしたい方は、マンスリーマンションを検討するのもおすすめ。クリーニング費が初期費用に含まれ、退去手続きもシンプルなので、退去のストレスを減らせます。