2025/09/02
災害時の住む場所はどう確保する?主な選択肢と、新しい仮住まいの考え方を解説

突然の災害で自宅に住めなくなったとき、「これからどこで生活すればいいのか」と不安を抱く人は多いもの。避難所は安心できる一方でプライバシーがなく、親戚や友人宅に長期間身を寄せるのも現実的ではないケースがあります。そのため、災害時に確保できる「住む場所」の選択肢を知っておくことが大切です。
本記事では、災害時に利用できる住まいの選択肢を整理し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。また、家具・家電付きですぐに生活できるマンスリーマンションという新しい仮住まいの考え方もご紹介。災害への備えとして、住む場所を確保する具体的な手順も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
災害時に住む場所を探す人が抱える課題
地震や水害で自宅が被災すると、多くの方が「今日からどこで寝るのか」という問題に直面します。ここでは、被災者が抱える住まい探しの課題を詳しく解説しましょう。
突然の避難で、安心して過ごせる環境が見つからない
災害は予期せず発生するため、避難先を十分に検討する時間が持てません。急いで避難所へ移動しても、大勢が集まる空間ではプライバシーがなく、「落ち着いて眠れない」「衛生面が気になる」など、身体的・精神的な負担が積み重なりやすくなります。
自宅の復旧に時間がかかり、生活の目処が立たない

床上浸水や地震によって損壊すると、修繕や建て替えに数週間から数ヵ月かかります。さらに、大規模災害時は業者不足により着手するのに数ヵ月待ちも珍しくありません。特に水害の場合は、床下の乾燥だけで1ヵ月以上かかることも。その間、仮住まいをどう確保するかが課題となり、先の見えない生活に不安を抱えるケースが多く見られます。日々の生活を維持しながら住まいを確保し続けることは、経済的にも精神的にも大きな負担となるのです。
長期滞在に向く住まいは費用や契約条件がハードルになる
ホテルや一般の賃貸物件は一時的な住まいになりますが、まとまった初期費用や長期契約の縛りが課題となります。例えば、賃貸物件の契約には敷金・礼金・仲介手数料で家賃の4〜5ヵ月分の初期費用が必要で、2年契約が基本です。もし数ヵ月で自宅に戻れる見込みがある場合、違約金のリスクを抱えることになります。また、ホテルは1泊1万円としても、月30万円の出費は現実的ではありません。「短期間だけ住みたい」というニーズに合った住居は意外と限られています。
家族構成や生活スタイルに合う住まいを確保しにくい
家族で避難する場合、小さな子どもや高齢者がいる世帯では住環境の条件がより重要になります。広さや間取りが合わなかったり、バリアフリーが不十分だったりすると、安心して暮らすのが難しいでしょう。また、ペットと一緒に暮らしている家庭では受け入れ先がさらに限られてしまい、住まいの確保は大きな課題になります。それぞれの家族の事情に合わせた住まいを限られた時間と予算の中で見つけるのは通常時でも困難なのに、非常事態ではさらに難易度が上がってしまうのです。
災害時の住む場所として考えられる主な選択肢
災害時に住む場所を確保するには状況に応じていくつかの選択肢があり、それぞれの家族構成・被災状況・経済状態によって最適な選択は異なります。以下で詳しく解説しましょう。
避難所に滞在する

避難所のメリットは、無料ですぐに利用できることです。食事や飲料水、毛布などの生活必需品が提供されて医療スタッフの巡回もあり、緊急時の安全は確保されます。また、同じ境遇の被災者が集まるため情報交換ができ、行政からの支援情報もいち早く入手可能。ボランティアによる炊き出しや、子どもの遊び相手になってくれる支援者の存在は、精神的な支えにもなります。
一方で、多くの人が同じ空間に集まるためプライバシーが確保しにくく、衛生面や騒音など生活環境のストレスが大きいのが課題です。夜間のいびきや話し声、早朝の物音で睡眠不足になる人も多く、ストレスから体調を崩すケースもあります。特に小さな子どもや高齢者がいる家庭には精神的・身体的に負担が大きいかもしれません。
親戚・知人の家に身を寄せる
親戚や知人宅への避難は避難所よりもプライベート空間が確保でき、家庭的な環境で過ごせるメリットがあります。日常生活に近いリズムが保てるため体調管理もしやすく、精神的な安定にもつながります。
しかし、どんなに親しい関係でも長期滞在は双方にストレスは生まれるもの。生活時間帯の違い・家事分担・光熱費の負担など、日が経つにつれて気まずさが増す可能性があります。また、家族の人数が多い場合は受け入れが難しいこともあるでしょう。そのため、一時的な選択肢にとどまるケースがほとんどです。
ホテルを利用する
ホテルは個室でプライバシーが守られており、清潔な環境により快適に過ごせるのがメリット。エアコン・お風呂・テレビなどの設備が整い、精神的な安定を取り戻しやすいのも魅力です。
ただし、その恩恵を受けられる反面、宿泊費は高額になります。例えば、家族4人でツインルーム2部屋を利用すると1泊2万円以上かかり、月60万円を超える出費に。長期滞在割引等を活用しても、1ヵ月以上となれば安定した住まいとしては限界があります。
車中泊する

車中泊は自家用車さえあればすぐに避難できるため移動の自由度が高く、避難所の混雑を避けられるのがメリットです。車内の荷物もそのまま持ち運べるため、貴重品の管理も安心。エンジンをかければ冷暖房も使えて、ラジオで情報収集もできます。
ただし、狭い空間での長時間滞在は体に負担がかかり、エコノミークラス症候群の危険性も。実際に熊本地震では車中泊による関連死が問題になりました。また、ガソリン代・駐車場代・銭湯代などの費用もかさみ、調理や洗濯ができず、トイレの確保なども課題です。
行政の仮設住宅を待つ
仮設住宅は被災者の長期的な住まいとして整備され、2年間無償で利用できます。プライベートも確保されており、生活基盤を整えやすいのがメリット。被災者が集まるのでコミュニティが形成されやすく、孤立も防げます。
デメリットは入居までに時間がかかることです。建設に最低でも2〜3ヵ月、用地確保が難しければ半年以上かかることも。また、立地が郊外になるケースが多く、通勤・通学に支障をきたすケースも少なくありません。「仮設に入れるまでが本当の被災生活」という言葉があるように、仮設住宅を待つ時間をどこで生活するかは考えておく必要があります。
マンスリーマンションが災害時に住む場所として注目される理由
災害時に安心して暮らせる仮住まいとして、近年マンスリーマンションが注目されています。ここからは、その理由を詳しく解説しましょう。
家具・家電付きですぐ生活できる

マンスリーマンションの最大の魅力は、入居したその日から普段と変わらない生活をはじめられることです。ベッド・テーブル・ソファなどの家具はもちろん、冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・エアコン・テレビまで生活に必要な家電がすべて揃っています。また、近年は調理器具や食器類も備え付けられている物件も増えています。最低限の荷物で入居できるため、災害直後でもカバン一つで生活できるのが大きな魅力です。
敷金・礼金不要で初期費用が少ない
一般的な賃貸住宅とは異なり、マンスリーマンションは敷金・礼金が不要なケースがほとんど。必要なのは賃料と清掃費など最低限の費用だけです。また、光熱費も定額制で、電気・ガス・水道の開栓手続きも不要。クレジットカード払いに対応している物件なら、手持ち現金が少なくても入居できます。災害時は思わぬ出費が重なりがちですが、初期費用をおさえてすぐに入居できる点は大きなメリットといえるでしょう。
家族だけのプライベート空間を確保できる

避難所や知人宅ではプライバシーが確保しにくい一方、マンスリーマンションなら家族だけの空間で安心して暮らせます。「他人の目を気にせず着替えられる」「子どもが泣いても周りに気を遣わない」「夫婦で今後の生活について話し合える」。こうした当たり前のプライバシーが、被災後の精神的回復には不可欠です。
また、マンスリーマンションの間取りは1DK〜3LDKまでさまざまあり、家族構成に応じて選べるのも利点。ペット可能な物件もあります。調理や洗濯も自分たちのペースで行えるため、普段の生活に近い環境を取り戻せます。
災害時でもスピーディーに契約できる
マンスリーマンションは、最短で申込当日の入居も可能な柔軟性があります。契約はWebで完結する物件も多く、身分証明書と緊急連絡先があれば即日契約も可能です。
また、最低30日以上であれば、日割り契約できる(1ヵ月+ 5日、1ヵ月+3週間など)点も魅力。自宅の修繕が予定より早く終われば途中解約でき、長引けば条件次第で延長することも可能です。スピーディーで柔軟性に富んでいるマンスリーマンションの契約方法は、災害時ならではの強みといえます。
【体験談】ゲリラ豪雨で浸水しかけ、マンスリーマンションに救われたAさん
2025年某日、東京都内で一人暮らしのAさんは、記録的なゲリラ豪雨で自宅マンション1階が床上浸水の被害に遭遇。急遽、近所にあるマンスリーマンションを検索し、復旧までの間マンスリーマンションに滞在しました。
災害の大きさにかかわらず、このような事態は突然起こるもの。Aさんのように「一時的な住まい」として活用する人は増えており、災害時の新しい住まいの選択肢としてマンスリーマンションは注目されているのです。
参考記事:水害・災害時の一時住まいに、マンスリーマンションという新たな選択肢を!
災害時の住む場所としてマンスリーマンションを選ぶ際の探し方
災害時にマンスリーマンションを利用するなら、事前に情報を整理しておけばいざという時に迅速な行動ができます。ここからは、災害時の備えとしてマンスリーマンションを探す方法を解説しましょう。
ハザードマップで自宅周辺の災害リスクを把握する

まずは、市区町村が公開しているハザードマップで自宅周辺の災害リスクを確認しましょう。洪水・土砂災害・津波・液状化など、地域特有のリスクが一目で分かるからです。それを基にリスクが低いエリアを優先的に探すことで、安心して暮らせる環境が確保できます。
自宅周辺で危険度が低いエリアのマンスリーマンションを複数リストアップする
ハザードマップで安全性の高いエリアを特定したら、そのエリアのマンスリーマンション情報を複数収集します。自宅から半径5km以内で、かつ災害リスクの低い場所が理想的。築年数が新しく、1981年の新耐震基準以降に建てられた物件を選ぶと安心です。
また、災害時は多くの人が同じ行動を取るため、第一候補が満室の可能性もあります。最低3〜5件はリストアップし、住所・連絡先・家賃・空室状況の確認方法をスマートフォンにメモしておきましょう。複数の候補を備えていつでも確認できる状況にしておけば「いざという時の安心」につながります。
家族で入居できる間取りか把握する
家族構成に応じた間取り選びは、快適な避難生活の要です。夫婦と子ども2人の4人家族なら、最低でも2DK、できれば2LDK以上が理想的。1LDKでも工夫次第で生活可能ですがプライバシーの確保が難しく、長期化するとストレスが蓄積する恐れもあります。子どもの勉強や高齢者の休養など、家族それぞれの生活スタイルに合った住まいを選ぶことが長期的に安心して暮らすための秘訣です。
ペット可物件や車の駐車場の有無を確認する

ペットを飼っている方にとって、ペット可の物件はなくてなならない条件です。通常の賃貸でもペット可物件は全体の15%程度ですが、マンスリーマンションではさらに少ないため事前の情報収集が不可欠です。
また、車を所有している場合は駐車場の確保も重要。駐車場付の物件であれば理想的ですが、なければ近隣の月極駐車場を調べましょう。避難中に不便にならないためにも、こうした条件を事前に確認しておくことが大切です。
災害時の住む場所は状況に応じて柔軟に選ぼう
災害時の住まい選びに正解はありません。避難所・親戚宅・ホテル・マンスリーマンションなど状況に応じて選択肢が変わるからです。大切なのは「安全性」と「生活のしやすさ」を両立させる複数の選択肢を持っておくこと。特にマンスリーマンションは、プライバシーと経済面のバランスがよく、先が見えない中での仮住まいとして有力な候補になります。
あなたの家族に合った災害時の住まい計画を立てておけば、その備えは必ず家族を守る力になるはず。防災グッズ同様、災害時の住まいの選択肢もぜひ考えてみてくださいね。
